日本語仙人の難しい日本語

漢字の読み書き、常套句、ことわざや格言、間違えやすい言葉―。中・上級レベルの日本語を紹介。

男女間の恋情を表す言葉(その2)

<<holmes & rahe 1967>>

 

 人肌が恋しいと言われる季節になりました。

画像は、ホームズとレイによる社会再適応評価尺度と呼ばれるものであり、日常生活においてストレスを感じる尺度を配偶者の死(Death of Spouse)を100とした場合、それぞれが幾つになるかを数値で表したものです。

順に見ていくと、結婚(Marriage)が50で、妊娠(Pregnancy)が40転居(Change in Residence)が20など、なるほど精神的負担が掛かりそうだなというものが並んでいるのが分かるのですが、後ろの方にクリスマス(Christmas)12というのがあるのに気づきます。

クリスマスが一大イベントとされるアメリカでの研究結果なので、日本などと比べて数値が大きくなってはいそうですが、このラインナップで”12”はなかなかだと思うんです。

家庭を持つ人にとっては、子どものプレゼントはどうしようだとか、ツリーの飾りつけがひと苦労だとかあるのでしょうが、家庭やパートナーを持たない(持てない)人にとっても、道行く浮かれ気分のアベック(死語)だとか、子連れの親子を見て心にぽっかりと穴をあけられるような苦しみがあるものです。


そこで閃きました。

どんな年中行事が周りで執り行われていようとも、いつも通り淡々と暮らす独り身こそが最もノンストレスで日々を過ごせるんだなって。(悔しさで唇を噛み締めながら)


…今日は男女間の恋情を表す言葉を紹介。

当初は少し違ったタイトルをつけようかと悩んでいたのですが、似たようなのを約半年前にも書いていたことを思い出し、その続編にすることにしました。

 

以前に書きました記事もお読みいただければ。

www.nihon5000nin.com

前回紹介したのは大和言葉風の顔ぶれでしたが、今回は風刺を含むことわざということで、一つ宜しくお願いいたします。

 

 

縁は異なもの味なもの(えんはいなものあじなもの)

人の縁というものは、理屈では説明がつかない。

”縁”というと、とくに男女の縁についていうことが多く、「縁結びの神」といえば、男女の仲を取り持つ神様のこと。

『江戸いろはかるた』に、「ゑ」の札として収録されている。

 

一生添うとは男の習い(いっしょうそうとはおとこのならい)

男が女を口説くときは、とかく大言壮語を吐きがちである。

まったくそのままの意味。

皮肉と教訓を含んだいかにもことわざらしい成句ですね。

 

一押し二金三男(いちおしにかねさんおとこ)

女性を口説くためには、何よりも押しが強いことが肝要である。

女性にモテる条件は、第一に押しが強いこと、第二にお金持ちであること、第三に見た目が良いこと。

つまり、男前であることは決定的要素ではないらしい。

 

「一押し二金三色気」という形様で私はこのことわざを初めて知ったのですが、こちらはあまり市民権を得られていない言い方なんですかね。

 

夜目遠目笠の内(よめとおめかさのうち)

はっきりと姿が見えない時に、女性は割増しで美しく見えがちである。

女性がより綺麗に見える3つの条件:

1.夜に会う 2.遠くから見る 3.笠を被っている

 

…要するに、はっきりと見えない方が、想像力で補正するので美しく印象付けられるということでしょうか。

近年、マスクを着用する機会が増えたということで、「マスク美人」という言葉を聞くことがよくありましたが、これは「笠の内」による効果。

また、一昔前に”ゲレンデマジック”という言葉が流行りましたが、これは、スキー場・スキーゴーグルが「遠目・笠の内」の効果を引き起こしたと言えるでしょう。

 

近惚れの早飽き(ちかぼれのはやあき)

すぐ夢中になる人は、飽きもすぐに来てしまう。

”近惚れ”とは、惚れやすいこと。

よく聞く「熱しやすく、冷めやすい」というやつである。

 

相惚れ自惚れ片惚れ岡惚れ(あいぼれうぬぼれかたぼれおかぼれ)

惚れ方は人それぞれであるということ

両想いの”相惚れ”、独りよがりで手荒な”自惚れ”、一方通行の”片惚れ”、ひっそり想う”岡惚れ

岡惚れは「傍惚れ」とも表記し、まったく交際のない相手(時には既婚者)に密かに恋心を抱くこと

 

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『恋に焦がれて鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす』という都都逸調(7・7・7・5)のことわざがあります。

あれやこれやとすぐに騒ぎ立てる者の陰で、それよりずっと深く心に秘めて思い悩んでいる者が居るというたとえです。

 

口から出まかせに「世界で一番君が好きだ!」だとか、「絶対一生幸せにする!」などと容易く口にすることができてしまう軽佻浮薄な男の正体を見破ることは、そんなにも難しいことではないのではなかろうと思いつつ、しかし残念ながらやはりそういう男のほうがモテてしまうのは確かなのでありまして。

 

「攻略し易く、成果得難し」を選ぶのか、「攻略し難く、成果得易し」を選ぶのか。

複雑な恋の駆け引きという奴は、古今東西変わらずあるのでございます。

 

以上。