近所で彼岸花が咲いていたので、幾つかを写真に撮ってきました。
夏季には道行く草むらに白い百合の花が咲いているのを見かけたものですが、彼岸の時期になると取って代わるように、この赤色がよく目に映るようになります。
暑くなったり、寒くなったり。
暦に似つかわしくない気温変化に見舞われている(?)昨今ですが、まるで地中で日数を数えていたかのように、今年もきちんと彼岸の時期に咲き始めました。
昔の人たちも、当然この印象的な花を気に留めなかった訳も無く、数々の物語を創出し、歌として詠まれ、文学作品等々の創作物のモチーフとして扱われ、彼岸花には1000種類以上の異名があるともいわれています。
他の呼び方でもっとも有名なのは、曼殊沙華(まんじゅしゃげ)でしょうか。
曼殊沙華は「赤い花」「天界に咲く花」という意味を持つサンスクリット語だそうで、この花を見かけることは、仏教的には瑞祥とされています。
一方で、毒性があることから「毒花(どくばな)」、「痺れ花(しびればな)」、「喉焼花(のどやけばな)」、「手腐花(てぐさればな)」だったり、彼岸の時期に合わせて墓地に咲くことが多いことから「幽霊花(ゆうれいばな)」、「死人花(しびとばな)」など、怖くて不気味な呼び方も多いです。
他にも、花と葉を同時に出すことがないことから、「ハミズハナミズ(=葉見ず花見ず)」。その色やイメージから、「狐の松明(きつねのたいまつ)」、「御神輿花(おみこしばな)」などの異名もあります。
中でも、特に怖くて悲しい呼び方の「捨子花(すてごばな)」の由来を調べてみたのですが、「ハミズハナミズ」同様、葉(=親)を見ずに花(=子)が咲く特性が、まるで子捨てのようであるからという説が有力でした。
他にも、彼岸には水子の霊も返ってくると言われており、水子の霊を供養する墓場によく咲いていたからという説も。
私が思うに、有毒であることから子どもが無闇に触ると危険なため、敢えて子どもを遠ざける名にしたのではないでしょうか。「親に捨てられる」という最も子どもが恐れる表現に。
1000以上の異名がある、なんてカッコいいですね。
よく不気味なイメージを持たれる花の代表格ですが、見れば見るほどに底知れぬ美しさに気づくことができるでしょう。
来年もまた同じ時期に咲き、田園風景に彩をもたらしてほしいです。