甘い食べ物より酒が好きな人のことを”辛党(からとう)”と言いますが、お酒って辛いか?と思ってしまいます。
塩辛い食べ物が酒とよく合うからでしょうか。
同じ理由で、ケーキやパンに合うコーヒーが好きな人は”甘党”と呼ばれているのでしょう。
しかし、ジュースのようなお酒を飲む人が”辛党”で、堪らなく濃いエスプレッソをがぶがぶと飲む人が”甘党”というのは、なんだか腑に落ちないですが。
今日は舌を含む慣用句を紹介。
私たちが食事を楽しめるのは、舌があってこそのものでございましょう。
目次
舌先三寸(したさきさんずん)
うわべだけで心がこもっていない言葉。
舌は言葉のこと。”寸”は長さの単位で、一寸がおよそ3㎝、三寸だと9㎝で、相当長い舌だな!ということになるが、”三寸”はちっぽけで価値がないことを表す喩え。
つまり舌(=言葉)の先が三寸しかない(=短い)ということで、内容の無い薄っぺらな発言という意味に。
二枚舌(にまいじた)
嘘をつくこと。また、よく噓をつく人。
ここでの”舌”も言葉の意。言葉巧みに人を欺く悪い人間に対してよく使う。
よく、”嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる”といいますが、物理的に痛みを与えて懲らしめるというよりは、比喩的に「余計なことは喋らせない」「事実に反するいい加減な噂話の排除」といった死後の世界の秩序を保つための統制なんじゃないかなと思ったりもしています。二枚舌の人間は、当然舌を抜かれるでしょう。
舌が肥える(したがこえる)
味覚が贅沢になること。味覚について感覚が鋭くなること。
ここでの”舌”は、味覚のこと。
「美食家」「グルメ」など、他にもわかりやすく使いやすい言葉が出回っているので、そちらを積極的に使っていけばいいんじゃないかと思いますが、関連語句が面白いので同時に紹介します。
口が奢る(くちがおごる)
上の「舌が肥える」とほぼ同義だが、味覚が贅沢になることの意味合いが強くなります。高価な食事でないと満足できなくなった状態。良い意味ではまず使われない。
貧乏舌(びんぼうじた)
こちらは反対の意味を持つ言葉で、何を食べてもおいしく感じられる味覚を持った人のことを表します。「味音痴」ではあるかもしれませんが、同じものを食べてもより美味しく感じられるほうが、ある意味幸せだといえましょう。
舌を巻く(したをまく)
感心や驚きのあまり言葉が出ない様子。
”舌”は言葉のことで、”巻く”には、「尻尾を巻く」「旗を巻く」とあるように、諦めて手を引いたり、降参したりするという意味があります。
どんな言葉も役に立たなくなった、ということで、相手に言い負かされて沈黙するという意味でも使われます。
筆舌に尽くし難い(ひつぜつにつくしがたい)
わりと難しい言葉群だが、人口に膾炙している慣用句の一つ。
意味はご存知の通り、程度がはなはだしく、文章や言葉や表現することが難しいということ。
”筆”は文章のことで、”舌”は言葉のこと。
筆紙(ひっし)に尽くしがたい
同様の意味なのでついでに。
”筆紙”とは文章に書き表すこと。
書面で積極的に使うべきなのはこちらかもしれませんが、口頭で使っても(伝わりにくいことを除けば)特に問題は無いでしょう。
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以上、「舌」を含む慣用句 でした。