日本語仙人の難しい日本語

漢字の読み書き、常套句、ことわざや格言、間違えやすい言葉―。中・上級レベルの日本語を紹介。

苦しい時に思い出したいことわざ5選

 「苦しい時は上り坂」「楽は苦の種苦は楽の種」 ―困難を乗り越えた先には大きな成長と明るい未来が待っている…。
この手の言葉は、見聞きしない日は無いほどに溢れていますが、苦しみの只中にいるときは居ても立ってもいられない状況で、とても精神論で切り抜けられるようなものではないと切り捨てられてしまうのが実情です。
ただ、御守り代わりに頭の片隅にでも記憶しておけば、多少の励みにはなる時が来るかもしれません。
 今回は、数多あるそれらの中から、5つを選んで紹介いたします。

目次

禍い転じて福と為す

自分の身に降り掛かった災難を活用し、逆にいい結果になるよう取り計らうこと。
元の形は「転為禍福(てんいかふく)」という四字熟語。
”失敗は成功のもと”という有名すぎる一文がありますが、ニュアンスはそれにとても近いですね。努力をしたりや考え方を変えたりすることで、マイナスをプラスに変えることができたりするものです。

怪我の功名(けがのこうみょう)

>失敗や災難が、却ってよい結果を生むことを怪我の功名と言います。
両者とも似た意味を指す言葉ですが、違いを示すならば転為禍福は努力の賜物であるのに対し、怪我の功名は思いがけず偶然にといったところでしょうか。

禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし)

幸福と不幸は表裏一体であるということの喩え。
幸不幸はよりあわせた縄のように変転を繰り返すものであるから、その都度一喜一憂するのは不毛であるということ。
つまり、思いがけない幸運にありつけたとしても油断せず、災難に遭ったとしても絶望するなという戒めと励ましの文句だ。

苦は楽の種、楽は苦の種

苦は楽の、楽は苦のもとになるという似た意味を持ちます。
こちらは水戸黄門のモデルにもなった徳川光圀(とくがわみつくに)の言葉だそうです。
「人生楽ありゃ苦もあるさ 涙の後には虹も出る」。

雨降って地固まる

事故や揉め事が起こった後は、かえって基盤ができることにより事態が良くなるというたとえ。
雨が降ることにより地盤が緩くなってしまうが、その後晴れて日差しにあたることにより水分が蒸発し、むしろ雨が降る前より強固になるという意味。
辛いことが起こっても、「いや、これを乗り越えたら以前よりもずっとよくなる!どんどんよくなる!」そう思えたら凄いですね。

人間万事塞翁が馬(じんかんばんじさいおうがうま)

人生は何が起こるか予測ができないことのたとえ。
人の世はいつどこでなにが起こるか全く予想できません。好調だと思われたものが突然瓦解したり、どん底で這いつくばっていた状況から大逆転をする可能性だったりします。
フォロワーが何十万もいるインフルエンサーと呼ばれる人たちが、舌禍事件を起こして炎上し転落したりと、突然真っ逆さまなんてこともあるもんです。
人間の読み方に注意。「にんげん」と読んでもおおよその意味は通りますが、ここでは「じんかん」「じんかん」と読む場合は「人の世、人生」をあらわします。

艱難汝を玉にす(かんなんなんじをたまにす)

ひどく辛い境遇は人を立派に成長させる。
”艱難”とは辛く苦しく悩みの絶えないこと。”汝”はあなた。”玉”とは宝、素晴らしいもののこと。
「人間は磨けば光るダイヤモンドの原石」
は、パナソニック創設者の松下幸之助の言葉。

艱難辛苦(かんなんしんく)

四字すべてが似た意味を持つこれでもかという強調表現。言葉にできないほどの苦しみ。

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以上、「苦しい時に思い出したいことわざ5選」でした。
「困難を乗り越えた先には、必ず良いことが待っている」。ただし、「うまく行ったからといってゆめゆめ油断はするな」。…という二つのメッセージが込められた言葉が多いような気がしました。

「勝って驕らず負けて腐らず」。
改めて、考え直したいですね。