酒に関する言葉は数えきれないほどありますが、その中で最も人口に膾炙しているのは、やはり「酒は百薬の長」でしょうか。
この6文字が長きに渡って死語にもならず現在まで、そしてこれからも引用の上に引用をされ擦り続けられ、あたかも英雄のように語り継がれるのは、単純に「罪悪感なく酒を飲みたい!」という群衆の欲求が為せる業でしょう。
これの意味する「適度な飲酒は万病に効く!!」というのは、部分的には肯定せざるを得ませんが、この言葉の存在を口実に身を滅ぼす者数多。
「酒と女は二合まで」という戒律もありますが、いやいや、酒も女も二合飲むような奴は、それで止められるはずもなく、三合四合飲むんです。
そして飲みすぎた翌日、第一声が「当分は飲まない。」
今日は酒に関連する言葉をいくつか紹介します。酒の性質や役割を謳ったものは今回採用していません。
痛飲(つういん)
大量の酒を飲むこと。
ここでの”痛”は「痛みを感じる」など痛覚によるものではなく、程度の甚だしいさまを意味する。「愉快痛快」や、「痛恨の一撃」、「(~と)痛感している」に使われている”痛”と同じ用法だ。
ちなみに、痛飲によって引き起こされた身体の不調などの病症を傷酒(しょうしゅ)という。
猩々(しょうじょう)
大酒飲みで、酒に浮かれては舞を踊るといわれる架空の動物。また、大酒飲みの人。
能の演目でこの”猩々”というのがあり、人語を解する赤毛の獣として描かれている。姿はオランウータンに似ているが、オランウータンが実際のモデルかどうかは不明。
ちなみに、オランウータンの漢字表記は同じ”猩々”。
ついでではありますが、以下の動物の漢字表記も参考にされたし。
大猩々(ゴリラ) 黒猩々(チンパンジー)
猿酒(さるさけ)
猿によって木の虚(うろ)などに溜めこまれた果実が、自然発酵して酒のようになったもの。ましら酒。
猿関連でこの言葉も紹介します。
猿が木の洞や岩のくぼみに溜めこんだ果実が自然発酵したものを昔の人が飲んだというのが初めと言われている。
穀物を原料とするのが一般的な酒だが、果実や木の実が原料となった場合は区別して猿酒(ましら酒)と呼ばれるそうな。
羽化登仙(うかとうせん)
酔いの快(こころよ)さを、羽が生え仙人になり天にも昇る心地だとたとえた言葉。
神仙思想(しんせんしそう)のあった古代中国では、誰もが憧れた理想のあり方だったそう。ここでの仙人とは神域に至った人。不老不死と飛翔のスキルを持つ無敵人間。
酒池肉林(しゅちにくりん)
贅沢の限りを尽くした宴会。
字面の通り、大量の酒と大量の肉のことだが、詳細な意味を取り違えやすい四字熟語の筆頭格。ここでの肉に肉欲の意味はなく、この四字に「性的に取っ散らかっている」という情報は無い。この時代ともなると、大量の酒と肉だけで、最高級の贅沢。
出典は『史記「殷本記」』。殷の時代、暴君で有名なあの紂王(ちゅうおう)が、池を酒で満たし、肉を架けて林のように仕立て、そこに裸の男女を互いに追いかけさせるという宴会を日夜開いたという故事から。
この”酒池肉林”に性的な意味がないとは言え、紂王が性的退廃者だったのは紛れもない。
以上、酒に関する言葉でした。