日本語仙人の難しい日本語

漢字の読み書き、常套句、ことわざや格言、間違えやすい言葉―。中・上級レベルの日本語を紹介。

漢字(和語)と漢語で意味が異なる熟語 その2(「人間」「大人」など)

前回の記事では、漢字(和語)と漢語でその意味が異なる熟語を紹介しました。

今日の記事はその続編になります。前回は左右は「さゆう」馳走は「ちそう」と、漢字でも漢語でも同様の読み方をする熟語でした。  今日紹介するのは、意味はもちろん読み方も違ってくるという熟語でございます。

 

大人

漢字:「おとな」

成人男女のこと。

漢語:「たいじん」

優れた人格を持った人。徳の高い立派な人。

対して、小人は「しょうじん」と読み、徳の低い人、品性に欠ける人のことを表します。

小人閑居(かんきょ)して不全を為すつまらない人間は暇になるととかく善くない事をするものだ)という諺(ことわざ)を目にしたことがあるかもしれません。

また、駅の切符売り場などで、「大人」「小人」という表記を見かけますが、あれはそれぞれ「だいにん」「しょうにん」と読むそうです。普通に「大人」と「子供」で良いような気がするのですが、何か理由があるのでしょうか。

中国人観光客がその表記を見て、誤解をしてしまうこともあるのではないかと。…とまで考えるのは杞憂ですかね。

 

人間

漢字:「にんげん」

ヒト。

漢語:「じんかん」

人の世。世の中。

 

青山

漢字:「あおやま」

樹木が茂っている山。

漢語:「せいざん」

骨を埋める場所。死に場所。

人間(じんかん)至る処青山(せいざん)ありという句は聞いたことがあると思います。「人間」は先ほどの「じんかん」と読むときの意味で、骨を埋める場所は世の中のあちこちに在るので、故郷を離れて大いに活動すべきだという教訓の言葉です。英語でいうと、クラーク博士が遺した”Boys, be ambitious.”に近いですね。

 

漢字:「あらし」

激しい風雨。

漢語:「らん」

澄みきった山々の空気。

山と風で成り立っている字だと考えると、漢語の意味のほうがしっくりくる様な気がします。

 

――――――――――――――

 

以上、漢字と漢語で意味はもちろん読み方も異なる熟語でした。

さようなら。

 

漢字の読み方には、呉音・漢音・和音などと、詳細な区分があるようですが、この記事では、現在日本で主に使われているものを”漢字”、古い時代の中国で使われていたものを”漢語”と表現しております。学問的な分類に関して説明いたしかねます。何卒、ご容赦ください。